出張旅費管理の新潮流

出張旅費管理の新潮流 第1回:トラベル・マネジメント・プログラムの導入を検討する

BTMA Japan(ビジネス・トラベル・マネジメント・アドバイザーズ・ジャパン)  代表 森 栄蔵
最終更新日:
2016年06月17日

最初が肝心、この工程を乗り越えれば、ゴールが見えてくる!

通常、ビジネス・トラベル・マネジメントに関わる悩みは以下のようなものが考えられる。

皆さんの会社ではいかがか?

・どの部署の管轄範疇にするのが効果的だろうか?
・専門的知識を持った人材が必要だろうか?
・導入する際どこまでの組織を対象とすべきだろうか?
・導入してどれくらいのコスト削減が可能になるのだろうか?
・導入にあたってどの階層レベルの承認事項とすべきだろうか?
(悩みの解決例については本コラムの末尾に。)

今ほど強い企業ガバナンスと社員、従業員のコンプライアンス遵守が必要な時期はない!これらの欠如の結果、企業の存続にまで影響を及ぼすような不祥事を起こした企業が思い当たる。

かって国内需要で十分やっていけた業種の日本企業も少子高齢化、人口減少等の環境変化に対応していくために特にリーマンブラザーズ崩壊、世界・金融危機による世界経済が落ち込んだ頃から海外進出が盛んになった。

以前のアジアへの生産拠点進出とは異なり、商品、製品、サービスの販売市場を求めての海外進出、現地法人設立となると当然考えられるのはビジネストラベルの発生である。

そこで、企業ガバナンス強化の観点からも、コンプライアンス遵守強化の観点からもビジネス・トラベル・マネジメント・プログラム導入が強くお勧めできる。

きっちりとした出張規定(トラベルポリシー)がない企業は、特に現地採用社員、従業員は途方に暮れ、会社に対する信頼感が揺らぐ! トラベル・マネジメント・プログラムの大まかな枠組みとは、出張規定、旅行会社との業務委託契約、利用航空会社と利用キャビン、宿泊先ホテル、客室のレベル、航空券・宿泊費・食費等旅費等の支払精算方法、危機安全管理等出張全般に関するルールを決め、明文化してその順守を管理することであると言える。

まず、トラベル・マネジメント・プログラムを導入するか否かの議論が必要になり、それをどのようにやるかと言うところから今回のコラムは始めよう。

(1)プログラム導入目的と効果の議論が最初にくる。
(2)次に、プログラム導入によるアバウトな利益と効果測定の試算が必要になる。
(3)その方法は人事総務部門がイニシアチブを取って、関係部署の協力を得て、代表の参加の下、議論をするのが一般的なスタートか。
(4)PM方式を取り入れて導入検討プロジェクトを立ち上げよう。そうすると責任所在が明確になり予定管理、コスト管理、成果物が目に見えて、導入議論が効果的に進む。
(5)導入の方向で話が進んだ場合は、CEO、CFO等のプログラム導入、運用支援のお墨付きをもらうとその後が楽になる。

ビジネストラベルにかかる一般管理費用項目をT&E(トラベル&エクスペンシズ)と呼び、この支出額は予想以上に大きく、主要管理目標の一つとなっている。

大雑把に言うと、メーカーなら自社の本業売り上げの1-1.5%が出張費支出と考えられる。

海外企業と日本企業の競争力を財務面から調査すると、日本企業の一般管理費は外資企業に比べて高く、競争力を阻害しているとの記事を目にする。またT&E削減は多くの日本企業には"手付かずで残された領域"であると言われている。

トラベル・マネジメント・プログラムを早急に考えよう、見直そう!

トラベル・マネジメント・プログラムの必要性と効用としては次の5つが挙げられる。

1.企業のガバナンス強化に繋がる。
2.社員のコンプライアンス遵守が強化される。
3.出張費支出、出張活動の見えるかとコスト削減に繋がる。
4.貴重な人財である出張者の危機安全管理に不可欠なものである。
5.出張者及び補助者を含む関係者の満足度を満たし出張業務の効率化、ROIを高める。

では、冒頭の一般的な悩みの解決例を挙げておく。

Q. どの部署の管轄範疇にするのが効果的だろうか?

A. 一般的には人事総務部門がイニシアティブを取ることが多く、購買部、財務経理、IT等の部門も関係すると考えるとよい。

Q. 専門的知識を持った職種はあるのだろうか?

A. 導入初期はトラベル業務外部委託契約した旅行会社の管理監督をする過程で知識が身に付く。そしてトラベルマネージャーなどの専門職を置くとよい。 

Q. 導入する際どこまでの組織を対象とすべきだろうか?

A. まずは小さく導入して、成果を出して段階的に拡げるのがよい。たとえば、本社内のみで実施⇒支社も含む範囲で⇒事業部へ拡大⇒海外法人もプログラムに組み入れるなど。

Q. 導入してどれくらいのコスト削減が可能になるのだろうか?

A. 購入額の大きい国際航空運賃、ホテル宿泊の調達・購買の現状レベルによるが、予想外に大きな削減が見込める。

Q. 導入にあたってどのレベルの承認事項とすべきだろうか?

A. プログラム導入、実施を初期の目標や、目的達成は全社的なもので、CEOなどトップ経営者が関わっていることを最初から周知徹底伝わるようにするとよい。

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著者プロフィール

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BTMA Japan(ビジネス・トラベル・マネジメント・アドバイザーズ・ジャパン)  代表
森 栄蔵

プロフィール
BTMA Japan(ビジネス・トラベル・マネジメント・アドバイザーズ・ジャパン)代表。プリンシパル・アドバイザーとして大手総合旅行会社、インハウス旅行会社、GDSに日本型BTM導入指導、社員の教育訓練を5年間実施。ほかに外資企業のBTMアドバイザーとして旅行業務包括契約の会社選任入札、入札後のベンダーマネジメント、旅行業営業力強化研修を中心に助言・指導を行っている。
日本国際観光学会に所属時は、ビジネス・トラベル・マネジメントと戦後海外旅行発達の歴史をライフワークテーマとして研究・発表活動を行ってきた。4年にわたり全国大会のセミナーでBTM理解と普及を目的として研究成果を発表。大手BTM旅行会社(TMC)およびインハウス旅行社相互の勉強会主宰、活動中。
2009年2月、旅行会社トップマネジメントクラブ、トラベル懇話会にて講演発表、目下の研究分野は危機管理、サプライヤー交渉のe-RFP、戦略的ミーティング管理(SMM)及びMICE分野。米国MICE関連公認資格CMPを2012年3月取得。ハラール管理者講習修了書取得。2013年観光庁MICE人材育成支援社のCMP受験をトラベルジャーナルと共同実施、合格者輩出。

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