月刊総務プラス

『月刊総務』本誌記事:

「時間も場所も働き方は自分で選ぶ」 これからの新しい働き方を実践

2018-02-19 10:01

最初に取り掛かったのは出社する理由をなくすこと

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 SAWSとは、「Six Apart(SA)らしい、 Working Style を実践する」との意味を込めて付けられた、同社の新しい働き方の総称。その特徴の一つは、全社員が、全勤務日、その日の業務内容に合わせて、自由な場所で働けること。自宅でもコワーキングスペースでもカフェでもかまわない。「もちろん会社で働くこともできます。ただ、現在のオフィスはフリーアドレスとなっており、全員分の席はありません。実際、オフィスにいるのは10人くらいです」と、事業開発 シニアコンサルタントの作村裕史さん。
 そもそもSAWSは、2016年6月、同社がEBO(Employee Buyout:従業員買収)を実施したことに端を発する。自らの意思でビジネスを進めていける体制での再スタートにあたり、自分たちらしい働き方をゼロから考えたという。「当時の私の通勤時間は片道約2時間。この時間をもっと有意義に使いたい。通勤を減らして生活の質を上げることで、仕事の質も上げられるのではと考えていました。独立後初めての社員総会で経営陣から提案されたのは、会議室とフリーアドレスの席を10席ほど用意した、必要なときだけ出社すればよいオフィスです。私も含めたほとんどの社員がこの提案に同意し、普段は“テレワーク・必要なときのみ出社”という働き方が始まりました」。
 どこで仕事をしてもいい。オフィスを縮小し、浮いたコストはテレワークのために投資しようと考えた。ただ、問題もあった。たとえば、給与明細書の受け取りや経費精算はどうするか。これは、クラウド型の労務管理ソフトや経費精算システムを導入することで解決。「立て替え経費の支払いも銀行振り込みか、アマゾンのギフト券での精算を選べるようにしました。手数料が掛かる銀行振り込みに対し、アマゾンのギフト券は少額の精算でも手数料不要でぴったりの金額を送ることができます。課題をすべて解決したわけではありませんが、小さな工夫で、会社に行かなくてはいけない理由を一つひとつ減らしていき、でき上がったのがSAWSです」。
 

オンラインとオフラインで意思疎通はより繊細に

 出社不要という新しい働き方を始めてから1年半。社内のミーティングなどは、意思疎通をはかる分には、チャットツールなどを使って問題なく行える。それでも、全社員が月に1、2回は、オフィスに来ている。社員総会をはじめ、週1のチームミーティングも、月初めのみオフィスで行っている。
 3分の1に縮小されたオフィスだが、会議室はしっかり用意されている。「コミュニケーションの6割は、非言語コミュニケーションで成り立っているといわれていますから、たまに会って6割の部分のアップデートをする。逆に、二人きりで相談がしたい場合などはチャットが便利。オンラインとオフライン、使い分けることで、今まで以上に繊細なコミュニケーションが実現できると思っています」。
 

制度として作ったのはテレワーク手当のみ

 制度として作ったのは、1か月1万5,000円のテレワーク手当だけ。この範囲内で、自宅で働いた場合の光熱費やプロバイダー費用、コワーキングスペースの利用代金などを、各自でやりくりをする。パソコンなど、仕事で使う機器は会社から支給されるが、個人的にこだわりたいものなどは、それぞれで購入する形だ。「先に手当として支給することで承認フローや、購買などの業務を軽減しました。また、上限ある手当をどう使うかと考える力を身に付けることで、社員の自律性を促すというねらいもあります」。
 ちなみに労務管理については、勤務管理システム上で上司がチェックし、労働時間オーバー気味のメンバーには声を掛ける。会社に来なくてもいい、というだけで、ほかは以前と何も変わらない。変えたことといえば、勤務規定にあった出勤、退勤という用語を、業務開始、業務終了とかえたくらいだ。
 

取り組みは積極的に発信 連鎖していくことを目指す

 同社では元々、節電と新しい働き方の実験を兼ねて、夏場のみ毎週水曜日をリモートワーク推奨日としていた。よって全社員がテレワークには慣れていた。それでも、仕事ぶりが見てもらえない中で、本当に正しく評価してもらえるのかと、不安を感じる人もいた。テレワークを始めた当初は、チャットで、業務開始と終了を宣言する人も多かった。「それが今ではほぼなくなりました。これは、1年かけて、本当に勤務態度で評価されるわけではないのだ、という信頼関係が築かれたからだと思います」。
 ではどのように評価をしているのか。プロセス、ポテンシャル、スキルのシェアなど、単純なアウトプットだけでは評価できない。「そこは今慎重に、どう考えていくかを検討しています」。働き方に正解はない。今ある形が正解だとも思っていない。常に新しい方法を探求し続けている。
 そうした同社の考えは、SAWSに取り組む上での「3つの思い(1、探求 2、信用 3、感化)」としてホームページ上で公開されている。「信用というのは、クレジット。弊社の場合、テレワークは性善説でやるものではなく、積み重ねによる信用がキーになると考えています」。よって新しく入った人は1か月、業務の研修も含めてオフィスで仕事をすることにしている。
 「感化は、SAWSの取り組みについて発信すること。成功も失敗もどんどん発信しながら、進化させていきたい。その一部でも参考にしてくれる会社さんが現れてくれればと考えています」。また、こうした新しい働き方への取り組みは、それ自体が会社のPRにもなる。「初めて」の取り組みは注目され、露出も増えて、長い目で見ればビジネスにつながる。
 実際、SAWSは注目を集めている。同社のようにはいかない、といわれることも多いというが、「人材の確保のためにも、テレワークはやった方がいいと思います。まずはできる部署からやってみる。むしろ営業などの方が向いているかもしれません」。いろいろな地域にいる人たちをテレワーカーとして雇用していけば、そこのエリアが新たな商圏になる。同社には現在、長野在住の社員がいる。離れた実家と行き来しながら仕事をしている人もいる。何の問題もない。今後の課題は、社外の人ともオンラインで意思疎通ができるようにしていくこと。「それが、日本の働き方改革の実現には不可欠だと考えています」。
 

【会社DATA】

シックス・アパート株式会社
本社:東京都千代田区神田神保町3-17-15 ヨシダFGビル5F
設立:2003年12月
代表者:代表取締役 古賀 早
資本金:1,000万円
従業員数:35人(2017年12月現在)