
総務担当者としては、「働き方改革」「生産性向上」「業務改善」といったワードを目にしない日はないのではないだろうか。労働人口が減少する中、働き方の見直しはもちろんだが、いかに優秀な人材を採用し、定着させるかが企業の大きな課題となっている。『月刊総務』編集長の豊田は、「企業の魅力を高め、優秀な働き手に応募してもらい、採用後は、帰属感を高めつつ末永く働いてもらう。これが『働き方改革』の本質です」という。
その企業の魅力の一つとして挙げられるのが、福利厚生の充実であり、社員の定着においても同様だろう。「福利厚生制度の施策が企業存続につながるといっても過言ではありません。特にプライベートに関する福利厚生は、働きやすさやワーク・ライフ・バランスの観点から、働き方とともに重要です。プライベートでリフレッシュすることは、働くモチベーションとなります。一方、e-ラーニング・セミナー受講の補助など自己啓発に関する福利厚生は、仕事の成果につながるため、やりがいを感じてもらうのに有効です。 福利厚生の充実は、人材の確保に大きな影響を与えるのです」(豊田)。
実際に、「2019年卒マイナビ学生就職モニター調査8月の活動状況」(2018年12月時点最新)によると、「入社予定先企業を選択したポイント」(ベスト3まで選択)として、1位に「自分が成長できる環境がある」(35.7%)、2位に「福利厚生制度が充実している」(31.4%)が挙げられている。しかも、同調査の2018年6月~8月において順位変動がなく、3か月同じ結果だったことから、学生がいかに企業選択で、「成長できる環境」「福利厚生の充実度」を重要視しているのかがわかる。
つまり、プライベートと仕事の両方を高められる福利厚生制度を会社が用意することにより、人は定着していくのではないだろうか。最近では、「メモリアル休暇」や「ファミリーデー」といった家族との接点を作るような福利厚生制度とともに、海外旅行や、資格取得など自己啓発のための機会を提供する「リフレッシュ休暇」を与える企業も少なくない。業務に直結していなくても、文化や教養に触れて右脳を活性化させるように補助を出し、「休むことも仕事のうち」として、積極的に休暇取得を支援する企業もある。「たとえば、休暇の過ごし方をイントラネットに報告させ、使い方の多様性を認知させて利用促進につなげたり、有給休暇を有意義に過ごした社員を表彰するなど、福利厚生制度をうまく活用している企業も増えてきています」(豊田)。
特に深刻な人材不足が叫ばれる中小企業としては、急務の課題といえる。とはいえ、中小企業においては、なかなか独自に施策を考え、福利厚生制度を充実させることが難しい状況ではないだろうか。そんな中、中小企業向けの福利厚生サービスも増えてきており、選択肢の幅も広がりつつある。今回は、実際に施策として自社に合った福利厚生サービスを導入し、改善をはかった企業をご紹介したい。
バイザー株式会社
- 本 社
- 愛知県名古屋市中村区名駅南2-14-19 住友生命名古屋ビル5F
- 業 務 内 容
- 高速一斉メール配信ASPサービス「すぐメール」をはじめとした
Webシステム開発および保守運用
- 設 立
- 2007年1月16日
- 資 本 金
- 4,000万円
- 社 員 数
- 51人(男性34人・女性17人)
- U R L
- https://www.visor.co.jp/

全国の自治体・官公庁への高い導入実績を持つ高速一斉メール配信ASPサービス「すぐメール」をはじめとした、情報発信ソリューションを提供するバイザー株式会社。名古屋本社を中心に展開し、東京と沖縄に支社を構えている。
2007年の創業以来、同社の福利厚生制度は法定福利のみだったが、労働人口減少や働き方改革推進等の社会的な動きがある中で、より魅力度の高い会社になることを目指し、近年内容の見直しが検討されていた。見直しの目的は大きく2つあった。
一つは「リクルート対策」。同社はこれまで中途採用のみだったが、2018年から、新たに新卒者の募集も開始した。管理部管理課の小澤幸子さんは、「福利厚生の充実は中途採用において好印象ですし、新卒者にとっては、さらに重視する点だと思います。そこで売手市場の採用戦線対策の一環として、手厚い福利厚生サービスを取り入れ、弊社のアピール材料にもしたいと考えました」と話す。
もう一つの目的は「社員満足度の向上」だ。小澤さんは、まず社員の声を聞こうと、2017年に社内アンケートを行ったという。その結果、「健康・医療に関すること」「特別休暇の設定」「総合的な福利厚生サービス」が上位を占め、まずはもっとも導入しやすい「特別休暇の設定」に着手。2018年4月から、慶弔休暇に加えて年1日取得できる「リフレッシュ休暇」の制度を設けている。

さらに、同アンケートで「あれば利用したいサービス」を聞いたところ、旅行やレジャー、自己啓発の補助サービスを挙げる人が多かったこともあり、福利厚生サービスの導入を本格的に調べ始めたという。声が多かった「健康・医療に関すること」については会社としても重要課題であり、ストレスマネジメントへの取り組みも同時に検討。「IT業界はメンタル面の不調を招きやすいというイメージがあります。もしフォローが必要な社員がいるなら、早めに手を打ちたいですから。加えて、社員の増員計画があるので、対策は必須です」(小澤さん)。しかし詳しく調べてみると、独自に外部の相談窓口を用意するのは手間もコストも負担が大きいとわかってきた。そこで、福利厚生サービスの中に、ストレスマネジメントの相談窓口があることも、選定の重要なポイントになったという。
こうした条件の中でマッチしているものを探すうち、JTBベネフィットが提供する「えらべる倶楽部」に出合った。そして内容やコスト、利用しやすさなど自社のニーズを満たしていることがわかり、「えらべる倶楽部」の導入を決めた。2018年10月、新社長就任のタイミングに合わせて、福利厚生サービスの導入を開始した。「えらべる倶楽部」を利用する際はパソコンでの登録が必要だが、すでに社員の97%が登録済みと、滑り出しは好調だ。
導入したばかりのため、実際のサービス利用者はまだ少ない。しかし、多くの社員が、旅行やレジャーなどの割引利用を楽しみにしているという。映画や水族館といった身近なものは、すでに利用した人もいるようだ。二親等まで同じサービスを受けられるのも、社員に好評とのこと。「弊社は平均年齢が37.4歳で、小さなお子さんを持つ社員も多いので、メリットを感じてもらえるでしょう」(小澤さん)。事前アンケートで社員の希望をリサーチしたかいもあり、「えらべる倶楽部」は社員の支持を得ているようすだ。
さらに「想定以上」の利点もあった。その顕著な例が、e-ラーニングだ。アンケートでは「自己啓発の補助」を利用したいという声が多く、無料講習も豊富で気軽に利用できるので多くの利用は予想できたが、育休中の社員にも活用されていることがわかった。「長く休んでいると復帰後に業務についていけるかといった不安もあるのでしょう。その対策としてe-ラーニングを活用しているのだと思います。このことから復帰のためのフォローが必要だと気付けたことも、収穫です」(小澤さん)。
同社は女性社員の育休取得率が100%。今後、さらに安心して育休・復帰をしてもらうためにも、福利厚生は大きな意義があると実感したという。加えて今回の試みが、潜在的な社員のニーズの掘り起こしにもつながるのでは、と考えている。今後も社員の意向を取り入れながら、サービス提供の充実をはかる。そして社員満足度の向上や自己啓発のサポート、さらには採用時等での会社の魅力訴求など、多様な角度に影響を与えられれば、と期待している。
上記で紹介したJTBベネフィットが提供する「えらべる倶楽部」に、KDDIグループのサービス優待がプラスされた「まとめて福利厚生」は、1人から導入可能な中小企業向けの福利厚生サービスだ。福利厚生施策の一つとして、「まとめて福利厚生」の導入を検討してみてはいかがだろうか。